放課後のGPU学園は、ふだんの喧騒がうそのように静かだった。
教室の窓から差し込む光は、冷却装置に反射してやわらかく揺れ、空間のあちこちに“おつかれさま”の気配が漂っている。
そのなかで、ちちぷいちゃんは、一枚の封筒をじっと見つめていた。
——生徒会 書記補佐 募集。
条件は、信頼できる仲間であること。
「……まさか、こんなふうに誘われるなんて」
ドキドキしている心をなだめるように、ちちぷいちゃんは深呼吸をした。
校舎の中庭に向かうと、すでにししょちゃんが待っていた。
制服のリボンをきちんと結び、まっすぐに立つその姿は、いつも通り頼もしく見えた。でも、どこかやわらかい雰囲気もあった。
「来てくれて、ありがとう」
「ししょちゃん……あの、あのねっ!」
ちちぷいちゃんは、思いきって声を上げた。
「わたし、生徒会に入りたい!もっと学園のこと、知りたいし、手伝いたい。ししょちゃんの隣で、一緒に……働きたい!」
言い終わる頃には、顔が真っ赤になっていた。
でも、ししょちゃんは、そんなちちぷいちゃんに微笑みながら頷いた。
「うん。実はね、私も最初は“仕事だから”って思ってたの。生徒会って、冷静で、完璧で、強くなくちゃいけないって。……でも」
ししょちゃんは小さく笑う。
「ちちぷいちゃんと一緒に過ごして、少しずつ気づいたの。誰かと心をつないで働くことは、弱さじゃない。むしろ、それがいちばんの“力”なのかもしれないって」
「ししょちゃん……」
「ようこそ、ちちぷいちゃん。これからは、生徒会の仲間として——いえ、“私の隣”として、よろしくね」
ふたりの手が、静かに重なった。
その瞬間、GPU学園の中心にある管理タワーから、淡い光が空へと広がっていった。
——新しいつながりを、確認しました。
——学園環境、最適化開始。
システムがふたりの心を、ちゃんと受け取ってくれたみたいだった。
ちちぷいちゃんは、ししょちゃんの横でまっすぐに空を見上げる。
ここは、自分の居場所だと、ようやく思えた。
そして、ふたりの物語は——
これからも、学園のどこかで静かに続いていく。
【ちちぷいちゃん、転送完了!〜GPU学園ログイン日誌〜】完